EXPO2025特集②
「EXPO2025 大阪・関西万博」 会場内も会場外もつなげ続けるための取組み

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)では、その規模や開催期間などの特性から、通常とは異なる通信対策が求められます。会場内の通信容量を最大化するため、キャリア合同のシェアリング基地局を設置して全体をカバーしつつ、シミュレーションに基づいて特定エリアの通信環境をピンポイントで補強。NTTパビリオン前にはガラスアンテナを活用した独自の通信対策を導入しました。さらに会場外においても容量対策やリスク低減の取組みを進めています。
特集第1回目では、NTTグループおよびドコモグループとしてどのように大阪・関西万博へ出展しているのかご紹介しました※1。第2回では、会場内外の通信エリア構築の取組みをご説明します。
- NTTパビリオンなど出展における取組みについてはこちらをご確認ください。
特殊な環境がもたらした課題
大阪・関西万博の通信エリア構築には、通常の市街地やイベントとは異なる特殊な課題があります。
1点目は人流です。国内外から注目を集め、多数の来場者が訪れることが見込まれ、大型連休や夏休み期間、閉幕直前には来場者が集中し、一日の来場者数が20万人を超える日もあると予測され、前例のない規模の通信量が推定されます。
2点目は通信基地局の設置スペースです。会場は公共空間であるため、基地局の設置にはさまざまな制約があります。会場内の景観にも配慮する必要があるため、基地局を設置できる場所は限られていました。
3点目が半年間という長期間の会期です。一般的なイベントよりもはるかに長い期間にわたって安定した通信環境を保つ必要があります。国賓など重要なゲストの来訪時には、特に厳格な保守管理が求められます。また、会期終了後には、役割を終えた基地局の撤収計画も重要な課題となります。
4点目は会場全体の工事との連携です。大規模な工事が進行する傍らで通信環境を構築する必要がありました。工事が行われているエリアでは基地局の設置が難しく、一方で工事を進める上では通信環境が不可欠なため、工事現場との密な連携・調整が求められました。会期終了後の撤収工事においても同様に連携が重要になります。
キャリア間の協力とドコモ独自の対策で通信容量を最大化
限られたスペースのなかで、快適な通信環境を実現するために導入したのが、シェアリング基地局です。これは通信キャリアの垣根を越えて共同で基地局設備を利用する取組みで、通常は屋内の限られた空間で採用することが多いのですが、屋外で全キャリアが共同利用するのは、前例のない取組みでした。この取組みにより、限られたスペースに各キャリアが効率的に通信設備を設置し、十分な通信環境を確保できるようになりました※2。

しかし、シミュレーションを進めていく過程で、当初の計画だけでは通信容量に不安があるエリアも明らかになりました。その対応として検討されたのが、小規模ながら特定のエリアをピンポイントで補強できる通信設備「スマートポール」です。導入エリアを粘り強く調整し、特に補強が必要なエリアへの導入が決定しました。

また、NTTパビリオン脇の広場では、ドコモ独自の通信容量対策を実施。夢洲駅からすぐの入場ゲートに近く、特に人の通行・滞留が予想されるものの、シェアリング基地局やスマートポールの設置が難しいエリアでした。そこでAGC株式会社とドコモが共同開発したガラスアンテナ※3を導入。窓ガラスの内側に基地局機能を持つ特殊なアンテナを貼り付ける技術で、景観を損ねることなく屋外への通信エリアを拡大しました。これにより、場所と景観の2つの課題を解決しながら、通信容量を増強することができました。

ガラスアンテナの詳しい解説は、特集第3回をご覧ください。
- 提供される電波は各社で異なります。ドコモは、屋外では4Gで搭載可能な全周波数の他、5GでSub6と呼ばれる2つの周波数と、ミリ波と呼ばれるより高速通信に向いた周波数を搭載。屋内でも4Gと5Gを組み合わせて通信容量の確保に努めるほか、3Gも提供を続けます。
- AGC製品名:WAVEATTOCH®。製品情報はこちら
をご確認ください。
快適で安全な万博体験のために
快適な通信環境の提供に向けた取組みは、会場内だけでなく周辺エリアまで広がっています。夢洲や、会場外駐車場のある舞洲では、自家用車やシャトルバスの動線上で手厚く通信容量を確保し、混雑時でも快適な通信を提供しています。また、大阪府外や海外からのお客さまが観光とセットで訪れることを考慮し、データに基づいた人流予測を行い、必要に応じて通信設備の増強を図っています。また、万が一の事態に備え、装置が故障した場合にも迅速に復旧ができるような保守体制を計画しています。
お客さまが通信のことを気にせずに万博を満喫することができるよう、可能な限りの通信環境の整備を施しました。ご来場される際は、万博関連アプリを事前にダウンロードいただき、会場では5Gを利用いただくことで、より快適に会場を回りやすくなります。
開幕後は約半年間、通信環境の維持に努めてまいります。ぜひ会場にお越しいただき、万博での展示をお楽しみください。
-
株式会社NTTドコモ 関西支社
ネットワーク部 ネットワーク企画
設備企画担当 主査上田 明頌
-
株式会社NTTドコモ 関西支社
ネットワーク部 ネットワーク計画
移動無線計画担当 主査竹田 悠二
-
株式会社NTTドコモ 関西支社
ネットワーク部 ネットワーク計画
移動無線計画担当山口 慎太郎

