つなぐを支える人 vol.3基地局が動き出すまでを
支える3人
「つながってあたりまえ」を支える人たちの仕事と、その裏側にある想いに迫るインタビューシリーズ「つなぐを支える人」。前回は、快適な通信環境をつくるために基地局の設置場所を見極める「置局」の仕事を紹介しました。今回は、その場所に実際の基地局をつくり、基地局から電波を発射するまでを担う、設計・施工・竣工の仕事に迫ります。話を聞いたのは、株式会社ドコモCS首都圏本部ネットワーク建設事業部で、設計工程を担う柴田(しばた)さん、施工・竣工を担う難波(なんば)さん、そして短納期や突発的な案件で工程全体の調整を担う片岡(かたおか)さん。それぞれ何を考え、どう工程をつないでいるのか。基地局から電波を発射するまでの舞台裏を聞きました。
全体を見渡し、次の工程まで見据える
基地局の設置場所が決まると、工事に向けた設計がはじまります。どこに装置を設置し、どのように配線するかを示す設計図面の作成に加え、工事に必要な機器・部材の準備や電波法申請など、複数の工程が進みます。
柴田さんは、図面作成などを担うパートナー企業と連携しながら、千単位で動く基地局建設の工程の進捗や優先順位を管理し、課題があれば関係者と調整します。だからこそ、自分たちの担当だけでなく、その前後まで含めて全体を見ることが重要だといいます。
Q. 基地局のスムーズな完成をめざすために、設計担当として何を大切にしているのでしょうか?
柴田:一つの基地局が完成するまでには、図面の作成だけではなく、工事に必要な機器・部材の準備、施工、その後の確認・試験など、さまざまな工程があります。なので、自分たちの工程だけを見るのではなく、全体を見ながら、どこがネックになりそうかを早めに捉えるようにしています。たとえば図面が予定どおり完成しても、必要な機器・部材の納品が遅れれば、工事を予定どおり進めることはできません。遅れが出てから対応するのではなく、早い段階で気づいて先回りして手を打つ。それが、一日でも早くお客さまに「つながる」を届けるために大切だと思っています。
基地局をつくって終わりではない。電波を発射するまでを見届ける
設計が整うと、現地で基地局をつくる施工へ進みます。工事をはじめる前に、施工場所や作業時間などの条件を改めて確認します。たとえば、予定していた場所が使えなくなっていたり、作業できる時間帯に制約があったりするため、着工前に改めて条件を確認します。工事のあとは、施工内容に問題がないかを確認する竣工へ。難波さんは、施工から電波を発射するまで見届けながら竣工まで工事の進捗管理をしています。
Q. 施工・竣工では、どこをゴールに進捗を見ているのでしょうか?
難波:基地局の設備を設置したら終わり、ではありません。設備だけでなく、ソフトウェアなど、通信サービスを開始するために必要な条件がすべて整って、はじめてお客さまに使っていただけます。だから、工事そのものだけを見るのではなく、実際に通信サービスを開始できるところまでを見ながら進捗を管理しています。
動かせない期日に向け、工程を重ねて進める
基地局は、設置場所の検討、設計、施工、竣工という工程を重ねてつくられます。工程の順序は同じでも、案件によって与えられる時間は大きく異なります。たとえば、再開発や建物の建て替えがある場合、既存の基地局を撤去し、その代わりとなる基地局の設置など、通信エリアを維持するための対策を急がなければならないことがあります。その他にも、大規模なイベントに向けて、「この日までに基地局をつくり、電波を発射する」と期日が決まっているケースがあります。こうした短納期や突発的な対応が必要な案件で、置局・設計・施工など各工程の担当者と調整しながら、工程全体をマネジメントするのが片岡さんです。
期日から逆算し、先回りして工程を動かす
Q. 特に短い期間で基地局を完成させなければならない案件では、どのようにプロジェクトを進めていくのでしょうか?
片岡:たとえば既存の基地局を撤去する案件では、まず、その基地局がなくなることでどのくらい通信への影響が出るのかを確認します。影響が大きく、早急な対応が必要だとなれば、置局、設計、施工など、基地局建設にかかわるメンバーを集めて、「特別定例」という会議を立ち上げます。そこで、「いつまでに通信サービスを開始しなければならないのか」「そのために何をいつまでに進める必要があるのか」を全員で共有します。通常は、基地局の場所や構成が固まってから設計、設計が固まってから施工へと次の工程に渡します。ただ、それでは期日に間に合わない案件もあります。そういう場合は、基地局の設置場所を検討する「置局」の段階から設計担当に情報を共有し、描けるところから図面を描きはじめてもらう。物品も準備できるものから手配する。施工側でも、必要になりそうな材料を準備し、工事の日程を先に押さえてもらう。工程の順序を変えるのではなく、前の工程がすべて終わるのを待たずに、できる準備を重ねながら進めるんです。最終的な期日から逆算して、どこまで並行できるかをみんなで考えていきます。
急ぎの案件を進めながら、通常工程も止めない
短納期の案件では、設計側にも通常とは異なるスピードが求められます。
Q. 急ぎの案件では、設計側が特に意識していることは何ですか?
柴田:最初に確認するのは、「なぜ急ぐのか」と「いつまでに必要か」です。そこから逆算して、設計・施工を担うパートナー企業と相談しながら、工程を前倒しできないか、重ねられないかを調整していきます。
一番難しいのは、急ぎの案件を進めながら、ほかの基地局の工程も止めないことです。一つを急げば、どこかにしわ寄せがいく。その両立に、いつも頭を悩ませます。
それでも、関係するみなさんと力を合わせて、期日どおりに通信サービス開始を実現できたときは、「やれてよかった」と心から思います。みんなで苦労して、一緒につくり上げたという感覚がありますね。
どれだけ急いでも、安全確認は省かない
工期が短くなれば、施工側にもスピードが求められます。それでも、安全にかかわる確認の工程を省くことはできません。
Q. 短納期の案件では、施工側はどのように工程を組み立てているのでしょうか?
難波:施工だけを急いでも、ソフトウェアなど通信サービス開始に必要な準備が整っていなければ、通信サービスは開始できません。施工できる時期と、それ以外の準備が整うよう全体調整をしながら、できる限り早く通信サービスを開始できるよう進めています。ただし、安全にかかわる確認は省きません。作業する人の安全はもちろん、いま使っていただいている通信サービスを止めないこと、オーナーさまの設備を傷つけないこと。そこは、どれだけ急ぐ案件でも変わりません。
それぞれの工程の先に、お客さまの「つながる」を見据える
設計、施工、竣工、そして全体の調整。それぞれの役割は違っても、3人が見据えている先は同じです。片岡さんも、お客さまを第一に考える一方で、安全は決して軽視できないと話します。日頃から各工程が連携しながら基地局を完成させ、短納期の案件では、その連携をさらに密にする。そうした一つひとつの仕事が、「つながってあたりまえ」という日常を支えています。