つなぐを支える人 vol.1方針と品質、2人の担い手
スマートフォンが快適につながる。その「あたりまえ」を支えるために、ドコモでは、今のお客さまの体感を確かめながら、数年先に必要なネットワークの方針を考えています。
今回話を聞いたのは、ネットワーク本部無線アクセスデザイン部の大和 佳史(やまと よしふみ)さんとネットワーク本部エリアマネジメント部の古橋 彬(ふるはし あきら)さん。大和さんは、将来の通信需要を見据えて全国のネットワークづくりの方針を考え、古橋さんは、今のお客さまの体感から品質課題を捉え、全国の改善を支えています。
将来に備えるため、今、何をするのか。現場の声を、どう次の方針につなげるのか。二人の判断と、その裏にある想いを聞きました。
数年先のネットワークを、「今」決める
ドコモでは、増え続ける通信需要に備え、基地局の新設や設備容量の増強など、全国で通信品質の改善を進めています。2026年度第1四半期(4〜6月)の3カ月で、5G・LTE合わせて約2,500局を構築するなど、基地局整備を加速しています。
ただ、基地局は、整備が必要だとわかっていても、すぐに設置できるものではありません。場所の選定や工事などを経て、完成まで1〜2年程度かかることもあります。だからこそ、目の前の課題だけでなく、数年先にどんなネットワークが必要になるかを考え、「今」方針を決めておく必要があります。
その全国のネットワーク展開方針を考えるのが、大和さんです。
Q. 数年先を見据えてネットワークの方針を考えるうえで、一番大切にしていることは何ですか?
大和:
しっかり“検討しきる”ことです。
大前提として、将来のことは誰にも正確にはわからないんですよね。
AIをはじめ新しい技術が広がれば、通信の使われ方も変わっていきます。
将来どんな技術やサービスが広がり、通信がどう使われるのかを推測して、そこから今やるべきことを考えます。加えて、今のお客さまがどこで、どのように困っているのか、何を求めているのかを把握し、何をすべきかを考えることもとても重要です。
そのために、社内の技術部門や品質部門、グローバルの動向など、社内外から幅広く情報を集めます。
それらの情報を分析し、最後は「今の私たちが出せる最適解はこれだ」と自信を持って言えるところまで検討しきります。そこだけは妥協しないようにしています。
Q. そこまで検討しきっても、方針をまとめるときに迷うことはありませんか?
大和:
単純には決められないですし、いつも悩みます。
本当は、今ある課題も将来への備えも、一度にすべてを解決できれば理想ですが、限られたリソースのなかでは、何を優先して対策するのかを決めなければいけません。
そのときに大切にしているのは、お客さまに「どんな価値を提供できるか」という視点です。
そのうえで、技術や品質の専門部門にとどまらず、実行部門との議論も重ね、実現プロセスを突き詰めます。「今」と「将来」の両面から、「いつ、何をすべきか」の道筋を立てることが、私たちの方針づくりです。
数年先の方針を考えるうえでも、「今、お客さまがどう感じているか」という情報は欠かせません。次は、その体感を全国の品質改善へつなげる古橋さんに聞きます。
お客さまの「体感」を、どう全国の改善につなげるか
新しく基地局を設置しても、それで品質改善が終わるわけではありません。ドコモでは、お客さまの声やSNS、通信量のデータに加え、現地での調査も継続的に行い、実際の利用状況を確かめています。古橋さんが担うのは、そうした情報から課題を捉え、全国の担当者が品質を確認・改善するための判断軸や仕組みをつくる仕事です。
Q. 品質改善を考えるうえで、古橋さんが一番大切にしていることは何ですか?
古橋:
一番大切にしているのは、お客さまと同じ目線をもつことです。机の上の数字だけで「大丈夫」と判断しても、実際のお客さまがストレスを感じていたら意味がありません。
私たちは通信環境を「点・線・面」にわけて見ています。「点」はスタジアムなど人が集まる場所、「線」は鉄道などの動線、「面」は住宅街やビジネス街です。
特に点や線では、お客さまの利用実態に近いデータに、品質改善のヒントが詰まっています。通勤路線なら最も混雑する朝夕のラッシュ時に実際に乗車して測る。スタジアムなら、入場前の待機列やハーフタイムなど、多くのお客さまが同時に通信を利用するタイミングに合わせて、現地で測ります。
「その場所・その時間で、本当に快適に使えるのか」を確かめる。そこが改善の出発点です。
Q. 全国各地で改善を進めるなかで、担当者によって品質の判断が違ってしまうことはありませんか?
古橋:
そこは、すごく大事なポイントです。共通の判断軸がないと、同じ品質データを見ても、ある人は「まだ足りない」、別の人は「これなら十分」と感じることがあります。
たとえば「動画視聴やSNS利用に支障が出ていないか」「利用者が集中する時間帯でも快適に使えるか」といった観点で品質を評価し、どの状態を改善すべき課題とするのかを全国で共通化しています。そのための計測ツールや分析環境も整え、全国の担当者が同じ目線で課題を捉えられるようにしています。
現場が迷わず、自信を持って改善を進めるための基準をつくる。それも私たちの仕事です。
全国へ示した判断軸や方針は、そのまま現場の仕事につながります。支社で働いた経験を持つ古橋さんは、だからこそ「本社から発する言葉」の重みを意識しています。
Q. 判断軸や方針をつくるうえで、古橋さんが心がけていることは何ですか?
古橋:
本社が「こうしてください」と方針を示すと、支社側はどうしても、それに沿って動くことになります。私自身、支社で働いた経験があるので、その対応や運用が現場にとってどれだけ大変かもわかります。たとえば、本社が新しい基準や分析方法を決めれば、支社はそれを実際の業務のなかで回していかなければなりません。
だから、どこまで本社で決めるのか、どこから現場の判断に任せるのか。その“踏み込むレベル”はかなり考えます。
発した言葉一つで、現場の担当者の負担が増えることもあれば、動きやすくなることもある。だからこそ、その先で実際に動く人たちの姿まで想像したうえで言葉にすることを大切にしています。
「将来を見る人」と「今を見る人」が、同じ方針をつくる
大和さんたちが考えた方針は、各地域の計画となり、基地局などの設備として形になります。その設備が実際にどう使われているかを確かめるのが、古橋さんたちです。さらなる強化・改善が必要だとわかれば、その気づきを、方針をつくる大和さんたちへ返します。
「将来に向けて備える課題」と「今、現場で見えている課題」。二つを行き来しながら、次のネットワークづくりの方針が練り上げられていきます。
Q. 大和さんは数年先を見る。一方、古橋さんは今のお客さまを見る。二つの視点が食い違うことはありませんか?
大和:
どちらか一方だけを見て方針を策定することはできません。古橋さんたちから上がってくる「今ここで困っている」という切実な声は欠かせないものです。
同時に、数年後の通信環境、技術やサービスの変化も見据える必要があります。「今」と「将来」をつなぎ、方針を検討することが重要だと考えています。
古橋:
私たちは、今のお客さまの体感を表した現場のデータから課題をすくい上げます。「ここはもっと強化した方がいい」ということが見えたら、大和さんたちへ返し、次の方針につなげてもらいます。
Q. 現場から返ってきた結果によって、最初に考えた方針を見直すこともありますか?
大和:
あります。お客さまが求める通信環境も変わりますし、現場から新たな課題が見えてくることもあります。そうした変化を踏まえて、方針を見直していきます。方針は一度策定したら“おしまい”ではありません。常に最適解を考え、必要に応じて見直していく。その循環が大切だと思います。
「つながってあたりまえ」の裏側にある仕事
方針を考え、現場で実行し、体感を確かめ、その結果をまた次の方針へ戻す。そのサイクルのなかで、二人はどんなときに仕事の手応えを感じるのでしょうか。
Q. この仕事をしていて「よかった」と感じるのは、どんなときですか?
古橋:
やっぱり、現場の仲間が喜んでくれるときですね。自分たちがつくった仕組みで改善が進み、現場から「めっちゃ良くなった、ありがとう!」と聞けるとうれしいです。
ただ、それだけじゃなくて、その改善の先にはお客さまがいるんですよね。現場からのうれしい声を聞くたびに、その地域のお客さまにもより快適に使っていただけているんだと思うと、それが一番のやりがいです。
大和:
私も、お客さまに満足して使っていただける環境を届けられることが一番です。ネットワークって、何も問題なく使えているときは、その存在を意識されることがほとんどないですよね。でも、ネットワークは、新しいサービスやデジタルイノベーションが生まれるための重要な基盤でもあります。そこを支えられることが、この仕事の魅力だと思います。
数年後にどうなっているのかは、内心“ドキドキ”します。でも、これが最適解だと自信を持てるくらい検討しますし、環境の変化に柔軟に対応するために、これからも方針を検討し続けていきます。
今のお客さまの体感を確かめる人と、まだ見えない数年先のネットワークを考える人。二人の判断の積み重ねが、やがてネットワークとなり、将来の「あたりまえ」につながっていきます。
私たちが意識することのない「つながってあたりまえ」の裏側で、今日も人が、つなぐを支えています。