備えと連携とテクノロジーで、災害時も「つなぎきる」
災害対策とAIによるネットワーク運用監視に関する
記者向け説明会の現場レポート
台風や豪雨が増える季節を目前に控えた2026年6月8日(月)、ドコモは災害時に通信を「つなぎきる」ことをテーマにした報道関係者向けの記者説明会を開催しました。
ネットワークを24時間365日監視する東京・品川の「ドコモネットワークオペレーションセンター」を会場に、平時と災害時の備え、業界の垣根を越えた連携、そしてAIを活用した事例の紹介などが、第一部と第二部にわけて行われました。当日の様子をご紹介します。
つなぎきるために、平時と災害時、ふたつの備え
第一部のテーマは、災害対策について。ビル1階のロビーを会場に、可搬型発電機や衛星通信機器、避難所支援の物品といった災害対策機器がずらりと並び、会場全体が小さな展示会のような雰囲気に。そんななか登壇したサービスオペレーション部災害対策室室長の尾崎康征は、「なぜ災害時に携帯電話が使えなくなるのか」という話から説明をはじめました。
実は、台風や地震で基地局そのものが壊れることは、ほとんどありません。サービス中断の原因の多くは、基地局間などを結ぶ光ケーブル(伝送路)の断線と、停電の長期化の2つに集約されます。そこでドコモは、平時の備えとしての「ネットワークの強靭化」と、災害時の備えとしての「応急復旧機材の拡充」を二本柱にしていると尾崎は話します。
強靭化の一例が、中ゾーン基地局の拡充です。停電や伝送路の断線などに備えた設備を持ち、通常よりも広い範囲をカバーできる基地局で、大きな災害が予想される地域を中心に全国約2,000か所への整備を進めています。
停電対策では、非常用発電機や大容量のバッテリーの配備に加え、災害時には基地局が使う電力そのものを抑える「スリープ制御」も導入されています。利用が少ない時間帯に使用する周波数帯を絞ることで消費電力を抑え、限られた電力で通信をより長く維持する仕組みです。さらには、光ケーブルが断線したときに自動で衛星回線へ切り替わる仕組みの整備も進められていることが紹介されました。
説明のあとは、屋外に移動して、車両そのものが基地局の役割を果たす移動基地局車を見学。倒木や道路の損壊で大きな車が入れない場面でも活躍する、軽自動車タイプの配備が拡大中であることが紹介されました。
第一部の後半では、尾崎から「災害時の企業連携」と「AIを活用した災害対策」が語られました。
業界の垣根を越えて連携する「つなぐ×かえる」プロジェクト
災害時の通信は、1社だけでは守りきれず、企業の枠を超えた連携が欠かせません。その象徴のひとつとして紹介されたのが「つなぐ×かえる」プロジェクト※です。避難所支援を通信4社で地域ごとに分担し、契約している携帯電話事業者を問わずすべての方が支援を受けられる仕組みです。過去の激甚災害において、事業者より貸与したモバイルバッテリーが好評であったことを受け、2026年6月からバッテリーメーカー各社も新たにプロジェクトに参画しました。
- 「つなぐ×かえる」プロジェクトについてはこちら
をご確認ください。
国内キャリアの垣根を越える相互ネットワーク「JAPANローミングTM」
「つなぐ×かえる」プロジェクトが企業間で物理的に助け合う仕組みだとすれば、通信網そのものを他社と融通し合う仕組みもあります。それが、「JAPANローミング」※です。契約している携帯電話会社のネットワークに障害が起きても、他社のネットワーク設備を経由することで通信を続けられる仕組みです。開始直後には岩手県大槌町の山林火災で提供され、その後の台風でもサービス提供されました。
- JAPANローミングについてはこちらをご確認ください。
AIで「先回り」する災害対応へ
将来に向けた取組みとして挙げられたのが、DX・AIの活用です。これまでの災害対応は、「この規模の台風なら、船が止まる前に保守要員を離島へ送っておこう」といったベテランが積み重ねてきた知見と判断力に支えられてきました。こうした知見をAIにも取込むことで、誰もが同じように的確な初動判断をとれる体制をめざしています。
たとえば被災予測AIは、降水量の予測や地形などのデータから、被災リスクの高い地域を事前に推定する技術です。発災直後には、AIが過去の事例やマニュアルをもとに対応タスクを提示し、災害対応の初動を支援します。基地局の停止状況や原因、影響の大きさを地図上で可視化するダッシュボードとあわせ、被害の最小化と迅速な復旧をめざします。
衛星の活用も広がっています。2026年4月にはじまった「docomo Starlink Direct」は、地上基地局の圏外エリアでもスマートフォンでメッセージの送受信などができるサービスで、災害時には災害用伝言板への登録やエリアメールの受信もできます。
AIと人が協働するオペレーションセンター
第二部の舞台は、ネットワークの監視・運用を担う中枢となるエリアへ。まずは、第二部のメインテーマである「AI活用による運用高度化」に関する説明がありました。
登壇した、サービスマネジメント部※オペレーションシステム担当部長の鈴木啓介は、5Gや仮想化技術の導入でネットワークは年々複雑になっていると前置きした上で、ドコモが取組む「デジタルツイン」の技術について紹介しました。デジタルツインは、100万台を超えるネットワーク機器の稼働状況を仮想空間上に再現し、実際のネットワークと同じ状態を常に把握できるようにする技術です。障害が起きると、AIが異常の検知から原因箇所の特定、対処方法の提案までを自動で行い、オペレーターに提示します。こうした仕組みにより、障害発生時の初動対応にかかる時間を大きく短縮しています。
質疑応答の時間では、AIの判断をどこまで信頼できるのかという質問も出ました。鈴木は「将来的にはAIの判断を完全に信頼できる状態をめざしていますが、現時点では判断・実行の双方に人の目の確認を入れて運用しています。AIには、なぜそう判断したのかという根拠情報を示させています」と答え、AIを活用した運用像を示しました。
災害時には、大切な人とのつながりが心の拠り所になります。しかし、あたりまえのようにつながっている通信の裏には、平時からの地道な備え、現場の工夫、事業者の垣根を越えた連携、そしてAIと人の協働があります。
ドコモはこれからも、災害時に通信を「つなぎきる」ための取組みを重ねていきます。
ドコモのAIによるネットワーク保守の取組みについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
- 本文中の所属組織は取材時点のものです。掲載時点では当該担当はサービスオペレーション部に統合されています。