人気観光地・軽井沢で挑んだドコモの通信改善プロジェクト
四季折々の自然が美しく、年間を通して多くの人が訪れるリゾート地・軽井沢。駅やショッピング施設、ゴルフ場など、多彩な魅力が集まるこの地は、観光や買物、レジャーを楽しむ人々でにぎわっています。そうしたなかで、スマートフォンによる決済やSNS投稿など、通信へのニーズは年々高まっています。ドコモは「訪れるすべての人に、ストレスのない通信環境を届けたい」という想いのもと、軽井沢での大規模な通信改善プロジェクトに乗り出しました。本記事では、その舞台裏と成果についてご紹介します。
なぜ軽井沢で通信対策に踏み切ったのか?
関信越エリアを代表する観光地・軽井沢は、そこに暮らす人だけでなく、町外や県外からも多くの人が訪れる場所です。なかでも、リゾート型ショッピングモール「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」は軽井沢を代表する人気施設のひとつ。お盆や夏休み、ゴールデンウィークといった大型連休には全国から人が押し寄せ、大変なにぎわいを見せます。
コロナ後、軽井沢のにぎわいが復活し、それと比例して通信量も急増。もともとは駅周辺とショッピングプラザの広いエリアを少数の基地局でカバーすることによって運用されてきたエリアだったため、その需要の増加に対応しきれず、駅・商業施設・ゴルフ場という三つの拠点で通信がつながりづらくなる報告が増加しました。そこで、現地調査を実施し、実際に品質の低下を確認した結果、対策が急務であると判断したのです。
そしてドコモは、「ショッピングプラザ内でのd払い決済画面の遅延」や「駅周辺・軽井沢72ゴルフ場での通信不安定」といった課題の解決に向け、駅・ショッピングプラザ・ゴルフ場の三拠点でWi-Fiの活用とインフラシェアリングによる通信改善プロジェクトを立ち上げました。
ドコモ内では全国初のスキームで“即効性のある改善”を実現
通信改善にあたってドコモは2025年7月までにショッピングプラザを中心とした駅周辺エリアの4G/5Gネットワークを大幅に強化するという目標を掲げました。しかし、基地局の新設には時間を要するため、まずは現場の通信品質を早期に底上げする対策に踏み切りました。
その一つが、ショッピングプラザ内への「d Wi-Fi」の導入です。同施設内でd Wi-Fi設備の設置は全国展開しているd Wi-Fiを導入している一部店舗のみでしたが、他事業者(ワイヤ・アンド・ワイヤレス社)が同施設内に設置済みのWi-Fi設備を借り受けすることにより短期間でd Wi-Fiが利用できるようにしました。
これまで当事業者からスポット的にWi-Fi設備を借り受けしたことはありましたが、このような大規模施設全体での借り受けはドコモとして、全国初となります。
2024年12月18日、クリスマスや年末年始の繁忙期に間に合うように26か所のd Wi-Fiアクセスポイントを設け、サービスの提供を開始しました。
景観と共存しながら進めた“恒久的な通信基盤整備”
一方で、通信容量そのものを抜本的に拡大するための取組みも並行して進めました。複数の通信事業者が設備を共同で利用するインフラシェアリングという仕組みを活用し、基地局整備が容易ではない軽井沢エリアでも効率的に基地局を構築できる体制を整えました。その実現に向けて、インフラシェアリング事業者のSharing Design株式会社と連携し、商業エリア内に新たなシェアリング基地局の整備を進めました。これにより、駅とショッピングプラザの両方をカバーしていた既存基地局への負荷が分散され、駅のホームで課題となっていた通信容量のひっ迫も解消できました。また、軽井沢72ゴルフ場北側エリアをカバーする新設局の構築にも着手し、広範囲での通信品質向上を図りました。
対策を進めるうえでは、2つの難点がありました。
ひとつは「地域特有の環境や条件」、もうひとつは「工事スケジュールの制約」です。
軽井沢では景観条例により基地局の高さに上限があり、建物の屋上へのアンテナ設置も認められていません。そのため、アンテナは建物の裏手など目立たない場所に配置するほか、やむを得ずお客さまの目にふれる場所に設置する場合には、柱の色を建物の外観に合わせるなど、周囲との調和を図る工夫を行いました。
また、設置後も既存基地局との電波干渉を防ぐため、エリア内の電波状況を細かく測定し、アンテナ方向の微調整を繰り返しています。
もうひとつの課題である工事スケジュール面では、観光シーズンとなる夏季に作業が制限されるため、通常は段階的に行う工程を並行して進めました。ドコモ社内の建設部門と緊密に連携し、本来であれば約15か月を要する工程を、約7か月という短期間で完了させています。
さらに、樹木が多いゴルフ場エリアでは、高さ制限と遮蔽物の両面を考慮し、最適なアンテナ配置を検討するなど、現場での試行錯誤も重ねました。
軽井沢エリアでの成功を、他の観光地へと広げていく
取組みの結果、d払い決済の画面表示が短縮されるなど通信環境が目に見えて改善。年間約850万人が訪れたショッピングプラザでは年末年始シーズンでも安定した通信を維持し、買物体験の質を高めることに成功しました。
その成果をふまえ、さらなる品質向上をめざしてd Wi-Fi環境の拡充を進め、2025年7月までに約80台規模までd Wi-Fiのアクセスポイントを拡充させたことで、通信ネットワークへの接続を待機しているスマートフォンの数が減少。駅周辺・ショッピングプラザで通信ネットワークを大幅に強化するという当初の目標の通り、通信品質をさらに高めることができました。
ゴルフ場でも安定した通信を提供できる環境が整い、2025年8月に行われたNEC軽井沢72ゴルフトーナメントの開催中も安定した通信環境を提供できました。
駅、商業施設、ゴルフ場という三つの拠点で安定した通信環境の構築を実現した今回のプロジェクトは、観光地特有の制約下で通信品質を改善するモデルケースとしての可能性を示すことができました。特に、シェアリング事業者であるSharing Design株式会社との共同整備や、他社Wi-Fi設備の借り受けといった手法は、景観保護が求められる地域において有効なアプローチであることを実証できました。ドコモは、この経験を生かし、将来的には旧軽井沢銀座通りや別荘地エリアなどへも対策を広げていく予定です。
景観と利便性の両立をめざした今回の取組みを、今後の観光地通信対策の指針とし、さらなる通信改善への足掛かりとしていきます。
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株式会社NTTドコモ 関信越支社
ネットワーク部 ネットワーク計画 移動無線計画西 孝介
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株式会社NTTドコモ 関信越支社
ネットワーク部 ネットワーク計画 移動無線計画 主査上條 晃宏
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株式会社NTTドコモ
ネットワークサービス部 Wi-Fi推進部門 Wi-Fi戦略 主査若浪 寛