「JFE晴れの国スタジアム」の通信設備容量を4倍に。ファジアーノ岡山J1昇格の熱狂を支えたドコモのネットワーク対策

「JFE晴れの国スタジアム」は、Jリーグで戦う岡山のサッカークラブ「ファジアーノ岡山」のホームスタジアムです。ファジアーノ岡山は2024年にJ1昇格を勝ち取り、地元に大きな熱狂をもたらしました。それに伴い観客が増加したスタジアムでは、以前より発生していた通信のつながりにくさが改めて浮き彫りとなり、より深刻な課題となっていました。今回は、地元の人々やサポーターにとって歴史的となる2025年のシーズンを快適な通信で支えるために取組んだ、ドコモのネットワーク対策をご紹介します。
歓喜のスタジアムで発生した通信課題
岡山県岡山市北区いずみ町にある「JFE晴れの国スタジアム」は、大規模なスポーツイベントやマラソン大会が開催される岡山県営の第1種公認陸上競技場です。ファジアーノ岡山のホームでもあるこのスタジアムは、最寄りの岡山駅から徒歩圏内とアクセスが良く、試合のある日は全国より数多くのサポーターが応援に駆けつけます。
JFE晴れの国スタジアムでは、以前より観客が多い試合で通信がつながりにくくなるという課題を抱えていました。それがより深刻化したのが、ファジアーノ岡山のJ1昇格への期待が高まった2024年シーズン終盤です。最大約15,000人の観客が詰めかけた際には、SNSの画面が開かない、キャッシュレス決済に時間がかかるなど、お客さまの快適な体験に影響をおよぼす事態が頻繁に発生するようになっていました。

ドコモではお客さまがどのようなタイミングで、どのように通信を利用しているかを肌で感じるために、実際の試合中に現地調査を実施。その結果からわかったことは、試合開始直前やハーフタイムに著しく通信が使いにくい事象が発生していること、そして原因が基地局設備の容量不足にあるということでした。この課題を目の当たりにするなか、ファジアーノ岡山のJ1昇格が決定し、翌シーズンも観客数が増えるという予測のもと、ドコモは早急に通信環境を改善することを決断。当初2025年秋からスタートさせる計画だったスタジアム専用対策局の構築を大幅に前倒し、満員のスタジアムでもSNSやキャッシュレス決済の利用を快適に行える環境を構築するために「2025年9月末までに通信の設備容量4倍」を目標※に掲げ対策へ乗り出しました。
「即時」と「抜本」。2つの対策で課題解決へ
通信の設備容量4倍増強という目標を達成するために、ドコモは「即時」と「抜本」2つの対策に乗り出しました。
最初に着手したのは、2025年のシーズン開幕戦に向けた「即時対策」です。まず近隣のビル屋上にLTE対応の仮設アンテナを設置し、スタジアム方面に向けて電波を発射する調整を行いました。電波の強さやアンテナの角度を調整するなど、細かくチューニングを整えた後、さらに5G設備を増設。LTEと同時に運用ができるネットワーク環境を構築することができました。この仮設アンテナの設置にかけられた期間は、わずか2か月。短期間での対策が実現できたのは、開幕戦に駆けつけたサポーターの人々に、通信のストレスを感じることなく観戦を楽しんでもらいたいという思いがあったからです。必要な資材の調達からビル所有者さまとの交渉、現場での調整作業に至るまで、社内関連部署が一丸となることで乗り越えることができました。

次に行ったのがスタジアム内の通信環境を改善させる「抜本的対策」です。通信ひっ迫が起きる原因である設備の容量不足を解消するために、スタジアム内に新しい基地局を設置する必要がありました。この対策の要となったのが、ひとつのネットワーク設備を複数の通信業者で共同利用する「インフラシェアリング」です。複数の携帯キャリアが基地局のインフラ設備を共用することで、個別に設備を設置するよりも、より迅速なエリア展開を可能にします。ドコモはこの仕組みを中国地方の屋外施設においてはじめて活用することを決め、シェアリング事業者とともに綿密な連携を取り、基地局の設計・構築に取組みました。

この新しい基地局では、観客席にいるお客さま一人ひとりに効率よく電波を届けるため、特定の方向に強く電波を飛ばすことのできるアンテナを採用。このアンテナを用いて、スタジアム内を4つのエリアに分割し、さらにスタジアム周辺に集まるお客さまのために屋外向けのエリアを1つ追加しました。合計5つのエリアそれぞれで4Gと5Gの両方のサービスを提供できる設計にしたことにより、一か所に通信が集中するのを防ぎ、快適な通信環境を実現することができました。多くの関係者の協力のもと、この新しい基地局は2025年4月末より電波を発射し、その後も段階を踏んでエリアと周波数帯を拡大しながら、継続的に通信を強化できる環境を構築することができました。
お客さまの快適が、新しい挑戦へのスタートライン
一連の対策によって、ドコモは目標※に掲げた設備容量4倍増強を、当初の計画より約3か月早い2025年6月に達成しました。これによりスタジアムの通信環境は大きく改善。混雑時にお客さまが感じていた「通信の使いづらさ」は約80%改善され、約15,000人を超える観客が訪れた試合でもスムーズな通信を提供することができました。また通信が安定したことでキャッシュレス決済時の利便性が向上し、バーコードが表示されるまでの時間は約半分に短縮されました。対策以前よりも快適で便利な観戦体験の提供につなげることができました。

今回の迅速な対応の背景にあったのは、J1という新たな舞台で戦うチームと、それを熱く応援するサポーターのみなさまの思いに、最高の形で応えたいという強い決意でした。ドコモは、今回の目標達成をゴールではなく新たなスタートラインと捉え、これからもサポーターのみなさまの楽しみと感動を支え続けられるよう、快適な通信環境の構築に挑戦していきます。
- 「2025年度 ドコモの通信改善 取組み宣言」については、こちらをご確認ください。
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