6G-IOWN推進部 ある開発者が思い描く未来の話
自分自身をセンシングして
相手に伝える。
テレパシーのようにして、
私たちは理解しあえる。
「いずれは言葉や文字を使わずに、感情そのものを他人と共有できるようになります」
現在とはかけ離れた話をその人は淡々と語って、ふと思いついた様子で笑った。
「ハラの探りあいみたいな、くだらないストレスがなくなる」
彼が研究を進めるのは、6G時代の新たなコミュニケーション。
人の動きや感覚をほかの人やロボットに共有する“人間拡張”のプラットフォームだ。
すでにピアニストの指運びといったスキルを個人の体に合わせてダウンロードする技術は実りつつあるが、そうした技術が進化した先。
一人ひとりの脳や体の情報を読み取るデバイスが普及していくと、言語化できない感情を難なく伝えられる世界になるそうだ。
「日本人って、自分の意見をはっきりいうのが苦手だと思うんですけど。そのせいでもどかしかったコミュニケーションが円滑になったらなって。相手の感情が理解できれば、さまざまなハラスメントもなくせるかもしれません」
自分自身をセンシングして相手に伝える。互いの感情がシンクロしあった世界では、人間同士が抱える複雑な課題もあっさり解決されるかもしれない。