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社外取締役からのメッセージ

自由闊達な議論でガバナンスを高め
新たなITパラダイムに向けた布石を

取締役
村上 輝康
産業戦略研究所 代表

ガバナンスのレベルを高める優れた仕組み

コーポレート・ガバナンスの強化には、自由闊達な議論が必要です。私は、2013年の就任以来、一般株主の立場からみて重要と思われる議案には、原則としてそのすべてに対して発言するという方針で取締役を務めてまいりました。

一般に、日本企業の取締役会は、月次や四半期、あるいは年次の議論に終始しがちで、中長期にわたる戦略的な議論がしにくい傾向があると言われています。それに対して、ドコモには、取締役会終了後に全メンバーが参加して、取締役会の議案にはない、中長期の事業戦略や企業風土の形成といったテーマについて忌憚のない意見を出し合う「放課後」という仕組みがあります。これは、取締役会の機能を活かした優れた運営方法であるといえるでしょう。

こうした取組みを通じて、ここ数年、事業の「選択と集中」にかかわる議論を活発に行い、インドの財閥タタ・グループとの合弁事業からの撤退や、生鮮食品宅配会社らでぃっしゅぼーやの売却などの「選択」を進めてまいりました。その一方で、新しい分野への投資やM&Aといった「集中」については、まだこれからだと感じています。5年、10年先を見据え、「選択と集中」の両方にバランスよく取り組むことで、より適切な経営が実践されると思います。

オートノマス化パラダイムへの転換期に向けて

社外取締役の役割には、知識や経験をもとにして広範な助言を行う「価値創造的側面」と、会社と経営陣、支配株主などとの間の利益相反を監視する「規律維持的側面」の2つの面があります。ドコモには、「国が3分の1の株式を保有するNTTが株式の6割以上を保有する」というコーポレート・ガバナンス上の特性があります。しかしながら上場以来、親会社と他の株主の利益相反という面で大きな問題に発展したことはなく、独立性が担保された節度ある関係が守られていると感じています。

そうしたなかで私が果たすべき役割としては、価値創造的側面が重要であると考えています。情報通信の世界は、世紀の変わり目に提唱されたユビキタスネットワーク化パラダイムが、スマートフォンの席巻するスマート化パラダイムにとって代わられ、そして今、オートノマス化*パラダイムに向けて大きく変化しようとしています。ここで必要なのは、AIやIoTなどの情報技術を機動的に活用する技術力、有効なサービスを生み出すサービソロジー(サービス学)に関する知識とスキル、グローバルな展開力、以上すべてを顧客に提供する価値共創力などです。

かつてドコモはユビキタスネットワーク化のチャンピオンでしたが、オートノマス化パラダイムへの転換期に向けて、何をめざし、どう布石を打っていくのか、それをきちんと考えていくのが、現在の中長期的課題であります。他社も手掛けていない未踏分野における、次代を担う起業家人材の輩出にも強く期待しています。

*オートノマス化:ICT機器が、利用者から一定の距離をおき、あたかも意思をもっているかのように自律的に振る舞い、利用者を含む環境に対して高度なサービスを提供するようなICT利活用形態になること。

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