コロナ禍によりエンターテインメント業界のオンラインビジネスが急成長するなか、2021年5月19日に開催された「NTTドコモ2021 夏 新サービス・新商品発表会」では、新たなライブビジネスのあり方が提案された。5Gをはじめとする最新テクノロジーの活用によって、オンラインライブの体験はこれからどのように進化していくのだろうか。
盛り上がりを見せる
オンラインライブ、
アーティスト側には課題も
2020年以降、ライブエンターテインメント業界の環境は激変した。イベント自粛要請や制限などにより、実際の会場に参加者を集めて開催されるリアルライブの中止や延期、規模縮小が相次ぎ、いまだに本格的な再開の目途は立っていない。
一方で、インターネットを通じて音楽コンサートなどの様子を配信するオンラインライブビジネスは急成長を遂げている。VRやARといった最新テクノロジーを駆使したり、参加者とのインタラクティブ性を取り入れたりと、新たなオンラインライブの楽しみ方も続々と生まれてきているところだ。しかしながら、オンラインライブを実施するうえでアーティスト側には、配信に係るコストや品質、企画・演出のマンネリ化など、多くの課題も生まれた。
そこで、ライブ配信サービス「新体感ライブ CONNECT」などを通じてオンラインライブの知見を積み重ねてきたドコモは今回、アーティストのファンコミュニティ運営に強みを持つTHECOO(ザクー)とタッグを組み、最先端テクノロジーが詰まったスタジオ「BLACKBOX³」を拠点として、次世代のライブ配信事業を共同で企画・運営していくことを発表した。
最新鋭のライブ配信スタジオを無償で提供
「BLACKBOX³」は、“エンタメをタクラム、ハコ”をコンセプトに、THECOOが2021年4月8日にオープンしたライブ配信スタジオで、大型4面LEDパネルと高性能なメディアサーバー「disguise vx2」を常設していることが特徴だ。
LEDパネルは、横幅9000mm × 奥行4000mm × 高さ4000mmという巨大なスペースに設置されており、背面・両側面・底面の4面にさまざまな映像を投影しながらライブ配信を行うことができる。またdisguise vx2は通常、大規模なライブやフェスでのLED映像演出、プロジェクションマッピングなどで使用される高性能なメディアサーバーだ。これが設置されていることで、VRやARといったXR技術の活用など、従来のライブパフォーマンスやMV撮影では難易度の高かったハイクオリティな演出をスタジオ内で実現することができる。
また、2021年度中には、ドコモの強みを活かして5Gエリア化も予定されている。高速・大容量、低遅延といった5Gの特徴を活用すれば、5G回線がメインの場合は有線回線をバックアップに、有線回線がメインの場合は5G回線をバックアップに用いることでより安定的な配信が可能になるだけでなく、たとえば、外出先や自宅でライブを観ている多数のファンの映像をリアルタイムにスタジオパネルに投影するなど、よりインタラクティブ性の高い演出が可能になるだろう。
まさに最新鋭のスタジオといえる「BLACKBOX³」だが、ドコモの動画配信サービス「dTV」および、THECOOのチケット制ライブストリーミングサービス「Cassette」でライブ配信を行うアーティストであれば、無償で利用できることもポイントだ。ドコモとTHECOOは、「BLACKBOX³」を通じて、オンラインだからこそできるライブの楽しみ方をアーティストたちと共に探っていくことで、5G時代の新しいエンターテインメントコンテンツを生み出し、より深い体験を音楽ファンに届けていこうとしている。
dTVの音楽コンテンツで
オンラインライブを
余すことなく楽しむ
「BLACKBOX³」でのオンラインライブは、dTVの有料ライブとして配信される。そのため、タブレットやスマートフォンなど手元のデバイスやリビングのテレビの大画面でも最新鋭のライブコンテンツを気軽に楽しむことができる。dTVではこれまで、映画やドラマ・アニメなど、さまざまなジャンルのコンテンツが提供されてきたが、今回、音楽コンテンツの拡充にあわせて新たに「ライブ」ジャンルが新設された。ここで、月額見放題の音楽コンテンツのほか、オンライン配信の有料ライブコンテンツが扱われる形となる。
有料ライブは、dTV月額会員以外のユーザーも購入可能だ。一方で、月額会員は、過去ライブ映像やMV、カラオケといったdTV内で配信中の見放題音楽コンテンツを楽しみつつ、有料ライブコンテンツを追加で購入すれば、同一アプリ内でそのままライブ配信を視聴することができる。このようにしてアーティストの音楽をより深く知ることで、オンラインライブを余すことなく味わい、満足度の高いエンターテインメント体験を楽しめるようになる。
また、有料ライブコンテンツの見逃し配信がある場合は、期間中何度でも視聴可能だ。ライブ直後に印象に残っている曲やパフォーマンスを何度も振り返り、長く余韻に浸ることができるのは、オンラインライブならではの醍醐味だろう。
5Gで広がるオンラインライブの可能性
5Gは今、本格的に普及しつつある。ドコモは、5G技術を活用したライブビジネスのさらなる発展に貢献すべく、BLACKBOX³での取組みを皮切りに、アーティストのニーズも汲み取りながら、最新テクノロジーを搭載したスタジオでのライブ配信の方法などさまざまな検討を進めていこうとしている。
コロナ禍によって制限されたものもあれば、新しい可能性が見えてきたこともある。ライブビジネスはその代表例の1つだ。オンラインならではの楽しみを多くの音楽ファンが体験したことで、オンラインライブは、アフターコロナにおいても、リアルライブと共存するものとして求められ続けていくだろう。そして、5Gをはじめとする最新テクノロジーのさらなる発展により、これからもオンラインライブの可能性は広がり続けていく。