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「しすぎない」環境で守るサンショウウオ

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種類豊かな、日本のサンショウウオ

サンショウウオと言えば、1mほどになる大型のオオサンショウウオを想像する人が多いと思います。日本には50種以上のサンショウウオの仲間が知られていますが、実はオオサンショウウオが別格に大きく、他の多くの種は大人になっても10cm前後の小さなサイズです。

サンショウウオの仲間には外見がとても似た種類が多く、最近のDNA解析によって以前よりも細かく種類が分かれることが判明し、現在でも種数が増加しています。たとえば、カスミサンショウウオは西日本を中心に広く分布するとされていましたが、2019年に出た論文では、再分類の結果9種に分かれ、九州のものがカスミサンショウウオ、近畿地方のものはヤマトサンショウウオとセトウチサンショウウオとなっています。また、ヤマトサンショウウオは関東地方に生息するトウキョウサンショウウオとも近縁であることが分かっています。

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日本の田んぼが守ってきたサンショウウオのくらし

これらのサンショウウオ類はその見た目だけでなく生活もよく似ています。サンショウウオ類は、水辺で産卵し、オタマジャクシのような幼生が水中で育ち、やがて足が生えて上陸し、陸上生活に移ります。渓流で繁殖する流水性の種と、池沼や水たまりで繁殖する止水性の種がいます。ヤマトサンショウウオは止水性で、水田の周りの水路やため池、水たまり、湧き水のある泉のような場所で繁殖します。サンショウウオ類の中では最も人里近くで生活する種と言えます。

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昔ながらの水田稲作は、このサンショウウオに好適な生活場所を与えてきました。里山での稲作では、ため池が作られ、水田の周囲には水路がめぐらされます。早春にサンショウウオはこのような場所に集まってきて水の中に産卵します。

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このような里山では雑木林が水田を取り巻いています。成体が森の中で生活するサンショウウオにとって、森と水域が接していることはとても都合のよいことなのです。このように、人間が営む農業がサンショウウオ類の繁殖や生活をこれまで守ってきました。そのようなサンショウウオ類ですが、現在、そのほとんどが絶滅危惧種となっています。

いい塩梅...「しすぎない」環境保全で守るサンショウウオ

では、なぜ今サンショウウオ類の多くが絶滅危惧種になっているのでしょう。

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その理由の一つは、昔ながらの農業がおこなわれなくなったからと考えられています。水田耕作が行われなくなると、水域にでは堆積した落ち葉が取り除かれなくなったり、草木が生えたりして次第に水が少なくなり、陸地化します。そうなると繁殖場所が減ってしまいます。

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水田に隣接する雑木林でも、放置すると樹が育ちすぎて地下水を吸い上げ、水が溜まりにくくなります。また、次第に常緑の木々が優勢となり、暗い森となって生き物全般にわたって多様性や個体数が低下していきます。サンショウウオ成体にとってのエサも減ってしまうわけです。

このような、人間活動の縮小による変化は日本の生物多様性の危機要因の一つに挙げられています。サンショウウオ類を絶滅の危機から守り、保全するためには、昔ながらの農業を想像しながら、「いい塩梅」を模索する必要があります。

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サンショウウオ類が安心して暮らせる落ち葉がたまりすぎず、草木が茂りすぎない水域、切りすぎず、茂りすぎない雑木林とはどのような状態でしょうか。昔の人がどのように生活していたか想像しながら「いい塩梅」を見つけることで、サンショウウオ類の保全について考えてみましょう。

執筆者

雲

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