column
登場人物
たよう せいくん
自然環境や生き物が好き。スマホゲームも好き。
もり まもる先生
森の生き物の豊かさと守り方を研究中。
スーパーの野菜売り場で売っているキノコですが、野菜ではありません。なんと、キノコの本体は微生物の集合体なんです。それも普段は糸のような姿をしていて「菌糸」(きんし)と呼ばれます。
菌糸は、多くは土壌や枯れ木、時には昆虫等の生物を土台にします。そして菌から出る酵素で土台を分解し、栄養を得ながら成長しています。だからキノコを収穫しても、本体の菌糸がなくなってしまうことはないのです。
実は、マツタケは生きたアカマツに菌糸が広がる珍しいキノコです。菌が広がっても土台のアカマツが枯れてしまうことはありません。むしろアカマツは、根っこにマツタケ菌が住めるように進化しています。
なぜアカマツは、根を変化させてまでマツタケ菌を住まわせるのでしょう。せっかく芽を出しても、土に栄養がないとアカマツの赤ちゃん木は育ちません。だからマツタケ菌を根に住まわせて、水分とミネラルをもらうのです。代わりにマツタケ菌はアカマツから炭水化物をもらって成長します。
このように、違う生物がお互いにメリットがある状態でバランスを保って生きていることを、「共生」といいます。
アカマツの根に菌糸の居場所があるのに、なぜマツタケは絶滅の危機にあるのでしょう。
アカマツは、栄養分の少ない土地を好んで早く成長し森を作っていくのですが、アカマツに守られる形で他の樹木も成長し、落ち葉や実を落とします。そしてだんだんと土壌に栄養が蓄えられます。栄養を蓄えた土壌は、マツタケ以外の菌も生きやすい環境になっていきます。
実はマツタケ菌はとっても繊細。ライバルが多い環境ではすぐに死滅してしまうのです。だからマツタケは、今でも人工栽培ができません。
昔の日本の暮らしでは、生活や農業を営むために土壌が痩せ気味になるくらい、昔の人は森を活用していました。マツタケ菌が自然に生えてくる環境が、長年人の手によって維持されていたのです。
しかし現在、石油や天然ガス、電気、プラスチックや化学肥料などの普及によって、森林を使う理由がなくなったためにマツタケが住みにくい森になってしまったのです。
人間の生活圏に近く、長年人が利用することで生態系を築いてきた森林のことを「里山」といいます。いつも適度に樹木が伐採されたために常に里山は明るい環境が保たれ、光を好むさまざまな種類の植物が成長しやすくなっていました。
全国に残されている里山はいまや、マツタケのようにむしろ天然の森林では生きにくいタイプの動植物にとっても貴重な生息地となっています。
マツタケは、人と自然が長い歴史の中で協力して育んだ環境でこそ守られる、生物多様性を象徴するキノコなのです。
執筆者
NPO法人ホールアース自然学校
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