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水素エネルギーは本当にCO2を排出しない
のか? 次世代発電の可能性

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日本では現在、カーボンニュートラル達成のために、「水素」を発電のエネルギーとして活用することが検討されています。なぜ、水素を使って発電する必要があるのでしょうか?

目次

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1.なぜ「水素」が新たなエネルギーとして
注目されているのか?

日本政府は現在、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出を、全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」の2050年までの達成を目標として掲げています。

とはいえ、その目標を達成するのは簡単なことではありません。資源エネルギー庁のデータ(※)によると、2021年度の温室効果ガス排出量は11億7,000万トン(CO2換算)で前年比2.0%の増加。2013年度比で見ると16.9%減少しています。前年度からの増加要因として、新型コロナ禍からの経済回復等に伴うエネルギー消費量の増加などが挙げられています。温室効果ガスの排出量の内訳としては、発電等のエネルギー転換部門、いわゆる電力部門からの排出が最も大きく、約4割を占めています。

(※) 経済産業省・資源エネルギー庁「エネルギー白書2023」

電力部門におけるCO2排出量の大半は火力発電所によるものとなっています。つまり、カーボンニュートラルを達成するためには、火力発電の使用を抑え、CO2の排出量が少ないその他の発電置き換えていく必要があります。

代替となる発電方法には、太陽光発電や風力発電があります。これらは再生可能エネルギーのため、発電時にCO2は発生しませんが、天候によって発電量が左右されるという難点があります。そこで、発電時にCO2が発生せず、しかも天候の影響を受けない水素発電の活用が検討されているというわけです。

そこで、発電時にCO2が発生せず、しかも天候によって発電量が左右されない特徴を持つ水素発電の活用が検討されているというわけです。

2.発電時にCO2が排出されない!

水素発電は、従来の発電方法と比べ、どのような特長があるのでしょうか。経済産業省の資料(※)によると、以下の4点のメリットを挙げています。

(※) 経済産業省「水素社会実現に向けた経済産業省の取組」

(1)再エネ電気、石炭・天然ガスなど、あらゆる資源から製造できる。資源の調達先が多様化できる。
(2)燃えるときに排ガスやCO2は出ず、出るのは水だけ。環境にやさしい。
(3)燃料電池自動車、発電、製鉄等の産業部門など、幅広い分野で利用可能
(4)日本の特許出願件数は世界一

カーボンニュートラルとしての観点では、(2)の「CO2を排出しない」という点が最大のメリットといえるでしょう。

水素で発電する方法には2通りがあります。1つは、水素を燃焼し、そのエネルギーでタービンを回して電気を作る方法。もう1つが、「燃料電池」と呼ばれる発電方法で、水素(H2)と空気中の酸素(O2)を化学反応させた際に発生する電気を利用します。

燃料電池方式で発電する際、水(H2O)は排出しますが、CO2については排出しないため、カーボンニュートラルへの貢献度が高い発電方式といえるでしょう。

なぜ「水素」が新たなエネルギーとして注目されているのか?

3.水素を作るためにはCO2排出が必須?

しかし、水素による発電には課題もあります。それが、水素の生産コストの高さです。前述の通り、水素を用いた発電はCO2削減への貢献度が高い一方、そもそも水素を調達するためのコストが高く、実用化が難しいという現実があります。

経産省の資料によると、現在、一般的な水素ステーションで100円/N㎥ (ノルマルリューベ)で販売されている水素の供給コストを、2030年には30円に、将来的には20円にすることを目指しています。

コストに加えて、水素を生成する際に、同時にCO2が排出されてしまうという、逆説的な問題もあります。

水素の生産方法としては、石炭や天然ガスを燃焼させてガスにし、そのガスから水素を取り出す方法があります。しかしその過程においては、CO2がどうしても発生してしまいます(グレー水素)。水素生成時に排出されるCO2を回収し貯蔵する、あるいは別の用途として利用することで、結果的にCO2排出量を抑える手法も存在します(ブルー水素)。

CO2を排出せずに水素を生産する方法もあります。それが、再生エネルギーで作られた電気を使って水を電気分解し、水素を作るという方法です(グリーン水素)。とくにトヨタ自動車などが参画する福島県、東京電力や東レなどが参画する山梨県の取り組みが注目を集めています。

福島県では2020年2月より、浪江町で世界最大級のアルカリ型水電解装置を備えた「福島水素エネルギー研究フィールド」の稼働をスタートしています。さらに2022年7月にはトヨタ自動車と連携、30万人規模の都市を想定した「水素のある暮らしの実装モデル」を全国に展開する取り組みを進めています。

早くから水力発電など地産のクリーンエネルギー施策を進めてきた山梨県では、2011年に米倉山に大規模な太陽光発電所を設置、2021年6月には固体高分子型水電解装置の実証試験を始めています。
2022年2月には東京電力、東レと協業し、再エネで得た電気を水素に変換して貯蔵・利用するP2G(Power-to-Gas)サービスの提供を開始しています。

4.水素エネルギーはすでに日常生活に
導入されつつある

いくつかの課題があるものの、水素を用いた発電方法はすでに我々の生活に導入されつつあります。特に実用が進んでいるのが、自動車の分野です。

たとえばトヨタ自動車では、水素をエネルギーとした自動車「MIRAI(ミライ)」をリリースしています。MIRAIは酸素(空気)と水素を燃料電池に取り込んで電気を作り、その電気でモーターを回して走る「燃料電池自動車」(FCV、Fuel Cell Vehicle)で、ガソリンを一切使用しません。

MIRAIの燃料となる水素は、全国各地に設置されている水素ステーションを利用します。初代は2014年から発売されており、2020年にはフルモデルチェンジを行った2代目もリリースされました。最近では、MIRAIをタクシーの車両として活用するケースも出てきています。

トヨタ自動車では水素エネルギーで発電しながら走る燃料電池バス「SORA(ソラ)」も生産しており、すでに多くのバス路線にて導入されています。たとえば東京都内であれば、東京駅と竹芝地区や東京タワー(一部の便)を無料で巡回する「JR竹芝 水素シャトルバス」が運行されています。

水素を用いた「電車」も登場しています。JR東日本の新車両「HYBARI(ヒバリ)」は、屋根に設置したタンク内の水素を、空気中の酸素と反応させることで発電。さらに発電した電気を蓄電池に溜める燃料電池と蓄電池の「ハイブリッドシステム」です。2022年3月より南武線(川﨑~登戸)、鶴見線および南武線尻手支線で2030年の実用化に向けた実証実験を開始しています。

水素の発電利用は、まだ一部でしか活用されてはいませんが、徐々に導入が進むに連れ、カーボンニュートラルも現実的なものに変わっていくことでしょう。機会があれば、先に触れた燃料電池の自動車やバスに乗ってみて、いちはやく水素の可能性を体感してみてはいかがでしょうか。

今回ご紹介した水素の活用のみならず、カーボンニュートラルの取り組みは多岐に渡ります。NTTグループが一丸となって進めている取り組みを以下のリンクで紹介していますので、ぜひとも興味のある方はご覧ください。

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